骨盤骨折 pelvic fracture
骨盤骨折はおもに交通事故で引き起こされる。気をつけないといけないことは、骨折部にとらわれずに、全身状態をよく見ておかないと、手術したが死の転帰をたどることも珍しくない。
交通事故でよくある致命的な合併症としては
頭部-骨折、頭蓋骨内出血、脳挫傷
胸部-肺挫傷、胸空内出血、気胸、横隔膜ヘルニア
腹部-胃破裂、脾臓破裂、尿路系疾患
動脈性の出血
皮膚の座滅、切開、感染
などこれらの症状が見受けられた場合まずそちらの処置が優先される。
また受傷後すぐに手術に入ることはストレスの加算が行われるので、
ショックを引き起こされることもよく注意しておかなければならない。
骨盤骨折について言えることは、骨盤周囲にはたくさんの動脈が走っており障害をうけるとそこから後腹膜腔に出血をおこし、出血多量になることがある。
血行動態的に不安定あるいは徐々に貧血が進行する症例では動脈性出血を疑わなければならない
また尿路系の破損も必ずと言ってあるので造影をして検査しなければならない。
骨盤骨折①
種類 | 犬、雑種 |
| 性別 | 雌 |
| 年齢 体重 | 1歳齢、12kg |
症状 | 交通事故。 肺挫傷と骨盤骨折 |
処置 | 来院時意識レベル正常。聴診湿性ラ音聴取。左後肢完全挙上。 水溶性メチルプレドニゾロンを静脈注射、安静にして経過観察。 受傷4日目呼吸状態は改善。血液レントゲン検査にて貧血が発生していないところから 受傷5日目に手術LC-DCPプレートを用いて内固定を実施。 |
経過 | 手術後はしばらく患肢を上げたままでしたが、1週間後から徐々に使い始め、3週間目にはほとんど跛行は見られなくなりました。 |

受傷直後のFCR像
肺野が白くなっており、肺挫傷を示しております。
左の骨盤(腸骨骨体部)で斜骨折してます。
このような症例ではすぐに手術するべきではなくまず肺の機能改善を優先しないといけません。

手術実施後 FCR像
骨盤骨折②
種類 | 犬、雑種 |
性別 | 雌 |
年齢 体重 | 7歳齢、15kg |
症状 | 交通事故。 骨盤骨折 坐骨骨体骨折 |
処置 | 夜間救急からの転院 来院時意識レベル正常。歩様がおかしく、肢を引きずるようにして歩く。 坐骨骨体骨折のため肢を挙上するための筋肉の起部が骨折のため力が入らない様子。 ワイヤリング手術 |
経過 | 手術1週間後から徐々に使い始め、3週間目にはほとんど跛行は見られなくなりました。 |

骨折部にワイヤーをかけてとめてあります。
他に骨折が無いためにこのような処置で十分に強度が得られます。
骨盤骨折③
種類 | 犬、雑種 |
性別 | 雌 |
年齢 体重 | 5歳齢、10kg |
症状 | 交通事故。 骨盤複雑骨折Malgaigne fracture、肺挫傷、尾椎骨折 |
処置 | 頭部の損傷は無いために、肺挫傷とペインコントロール、尿路系の造影、出血経過を確認。さいわい血尿がかなりあったが尿路系に破綻は無く、腎臓も正常に機能していた。 受傷後5日目に骨盤骨折の整復となった。 |
経過 | 最低限の修復のみの手術となったため、改めて手術の可能性があったが、予後は比較的良好で後肢麻痺がやや残る程度まで回復した。受傷後約3週間で立ち上がれるようになり、1.5ヵ月後には少しの跛行を示すのみまで回復した。 尾椎の骨折は神経の断裂を伴うためまったく回復の見込みがありません。 断尾を行いました。 |


受傷後胸部FCR写真
肺挫傷のため呼吸速拍がみられ胃内部に空気を飲み込んでいる


受傷後腹部FCR写真
骨盤部骨折

骨盤拡大写真
①左仙腸関節離断 ②右腸骨骨体斜骨折 ③第1尾椎骨折 ④左坐骨骨折 ⑤左恥骨骨折 右寛骨臼内部にも亀裂が入っている。 |


手術後のFCR写真
右の腸骨体にDCPプレート
左の仙腸関節離断には3.5mmのスクリューとテンションワイヤーをかけてあります。
坐骨骨折と尾椎骨折については手術時間の関係から後日の手術となりました。
ここに挙げた症例は運よく助かり今も元気に生きているが、治療の甲斐なく亡くなるまた病院に着いたときにはすでになくなっていたということも珍しくない。動物の交通事故は人の監視下でほぼ防げるとおもわれる。ノーリード、放し飼いなどをなくせばしなくてよい怪我をせずに済むのではないか。私は不幸な動物が少しでも少なくなるように願ってもやまない。