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ネコの皮膚欠損の転移皮弁による閉鎖

  • 2008年10月15日(水)15時58分
  • by eto

症例 ネコ 3才 メス

2008/3/26 けんか傷による大腿部の皮膚欠損により来院した。
皮膚と皮下組織のみの欠損で筋肉の損傷はなかったが、皮膚の欠損部は5cm×8cmと大きく、表面に壊死組織と膿がのこっており、感染兆候(腫脹、発赤、熱感、疼痛)があった。
壊死組織を除去し、イントラサイトジェルシステムでのドレッシング、抗生物質の全身投与を開始した。また貧血状態であったので(HCT20.4%)鉄剤も投与した。
飼主の事情や、ネコの脱走により、抗生物質の投与、ドレッシング剤の交換を連日行う事が出来ず、皮膚欠損部は改善と悪化をくりかえしたので、飼主と相談し、2008/7/1から病院での入院治療を開始した。
2008/10/14までの3ヶ月半ドレッシング剤の交換を一日一回行い、抗生物質の全身投与を行った。一般状態や貧血は改善したが、創面は上皮細胞が再生しなかった。
2008/10/14皮膚欠損部の頭則側の皮膚で転移皮弁を作り、皮膚欠損部を閉鎖した。
今回の症例の上皮化の遅延については欠損部が大腿部で張力がかかる場所であったことや連日のドレッシング剤の交換や抗生物質の投与をはじめるまでに時間がたっていたことなどが考えられるが、創面の肉芽と辺縁の皮膚を病理検査に提出中である。
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その他の猫の伝染病

  • 2008年09月07日(日)16時41分
  • by 夕陽丘 院長 兼 管理者

ヘモバルトネラ
 別名猫伝染性貧血の名がある通り赤血球に寄生して貧血をおこす病原体です。伝染は多分吸血昆虫(蚤など)によると考えられています。ヘモバルトネラ寄生にともなって、赤血球はもろくなったり寿命が短くなったりして、赤血球の数が少なくなります。このため鼻の頭や歯茎が真っ白になり、運動すると息切れをしたり倒れたりといった貧血の症状がでます。これだけで貧血になることもありますが、多くの場合はヘモバルトネラが体の中に潜んでいて、そこにストレスやウイルス感染(猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス)が加わると急に貧血になります。貧血自体は赤血球を作る方には問題がなく、壊されるのが原因ですので、抗生物質でヘモバルトネラを退治すれば通常は回復がみられます。ただし猫の免疫が異常になるようなウイルス感染、その他のストレスなどが根底にある場合には、治療効果がはっきりしない場合もあります。

コクシジウム
 主に子猫が感染し、下痢をおこします。水様の下痢や血便となることもあり、激しい場合には脱水、衰弱がおこります。コクシジウムは原虫の仲間で、感染した猫の便の中にたまごのようなもの(オオシスト)がでてきます。これが次の猫に口から感染するのですが、便の中に出た直後のオオシストは感染力を持たないので、便はすぐに片づける習慣にしておけば、他の猫への感染は予防できます。またオオシストは熱湯で殺すことができます(ブリーチなどの消毒薬は効きません)。治療にはサルファ剤が効果があり、その他必要に応じて抗生物質、あるいは水分・栄養の補給が行なわれます。

トキソプラズマ
 原虫の仲間のトキソプラズマは自然界に広く分布していて、猫以外のほ乳動物(ネズミ、豚など)、鳥、は虫類、両生類、魚類などが感染して病原体をばらまく役割を果たし、土の中にもオオシストはみつかります。そして最終的に猫が感染して、終末宿主となります。したがって感染の経路は、ネズミから、生肉から、土から、また他の猫の便からといろいろです。猫が感染した場合、多くは無症状のまま終わってしまいますが、一部は症状をだし、治療を行なわないと死亡します。症状は熱、元気・食欲の消失、嘔吐、下痢、呼吸困難、黄疸、眼・神経症状など様々で、他の病気との区別はかなり難しいものです。診断がついた場合にはサルファ剤等の投与を行ないます。この病気の人間への危険性について猫がとくに危険視された時代もありましたが、現在では衛生的な配慮をきちんと行えば、妊婦が猫を飼っても危険はないと考えられています。すなわち、食事の前には手を洗い、猫の便は1日以内に片付け(心配ならばゴム手袋をして)、便器の熱湯消毒を行なえば安心です。また豚肉、ラム肉は生や半生では食べないことが重要です。さらにトキソプラズマに対する抗体を持っている人は免疫ができているので大丈夫です。

クリプトコッカス
 イーストに似たかび(真菌)の仲間が原因の伝染病です。通常は土の中にいる菌ですが、鳩の体内を通過し(病気はおこさずに)糞のなかにでると、そのまま胞子が2年以上生き続け感染源になります。感染は胞子を埃として吸い込んでおこりますが、猫から猫へ、あるいは猫から人間への感染はこれまで報告がありません。症状は感染の場所によってさまざまですが、たとえば鼻の奥に感染して、慢性の鼻水がでたり、鼻の形が変わったり、あるいは神経症状をだしたり、眼の症状があったり、慢性の皮膚炎があったりします。特徴は慢性の病気でしかもどんどん進行して行くことです。これまで治療は難しいといわれていましたが、最近では効果のある薬がみつかっています。本来はあまり多い病気ではありませんが、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス感染で免疫が障害されていると、もともと環境中にいる菌なので、感染・発病の危険性は多くなります。人間でも免疫不全患者やガン患者、あるいは免疫抑制剤を使用中の人に発生することがほとんどで、このような性質から日和見感染病原体と呼ばれています。

クリプトスポリジウム
 猫その他の動物(は虫類、鳥類、ほ乳類)人間が感染する原虫で、この中でも犬と猫は比較的抵抗性が強いようで、あまり症状をだしません。オオシストが口から入って腸の中で増え、便の中にまた出ますが、ほとんど猫は症状を出しません。人間では免疫抑制患者、とくにエイズ患者で慢性の下痢が報告されていて、やはり日和見感染病原体と考えられます。猫から人間への感染が証明された例はこれまでありませんが、人間が仔牛からかかった例があります。猫ではほとんど問題が生じないため治療は報告がありませんが、人間では薬物療法が行なわれています。

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ウイルスによる伝染病

  • 2008年09月07日(日)16時37分
  • by 夕陽丘 院長 兼 管理者

現在猫には、ワクチンで防げない恐ろしい伝染病が3つあります。それらは、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)、猫伝染性腹膜炎(FIP)です。これらのウイルスは猫に様々な病気をひきおこし、かかった猫は不幸な運命をたどることが多いものです。
FIVに関しては今年から認可を受けたワクチンが発売になっています。他のワクチンとちがう振る舞いをしますので、かかりつけの獣医師に相談してください。

猫伝染性腹膜炎
症状 猫のコロナウイルスが原因です。猫伝染性腹膜炎(FIP:エフ・アイ・ピーと読みます)という名前がついていますが、病名の通り腹膜炎を起こすものが一番多いながらも、他の病気が起こることもあります。腹膜炎が起こると腹に水がたまり、腹部が膨らんでぶよぶよした感じになります(ウエットタイプ)。同時に元気、食欲はなくなり、熱の為にぐったりすることもしばしばあり、体全体としては痩せてきます。また下痢が続くこともあります。また肝臓や腎臓が悪くなることも多いので、全身的に重い病気になりやすいものです。同じ様な病気が胸に起こると、胸膜炎となり、胸水が溜って肺が圧迫され、呼吸が苦しくなります。別の型では腹膜炎は起こらずに腎臓や肝臓にに硬いしこりができ機能障害が進行するものもあります(ドライタイプ)。さらに同様の病気が脳に起こると、麻痺などの神経症状が出ます。また眼に炎症が起こって、濁ってくる場合もあります。一般に、発病した場合はその後徐々に病気は進行する傾向にあり、死亡率は非常に高いとされています。特に貧血と衰弱が進み、神経症状が出ていると最悪で、治療の望みはありません。
予防 猫が集団で生活している場所には必ずといってよいほどこのウイルスは蔓延しています。したがって多くの猫がこのウイルスに感染するのですが、実はウイルスに感染しただけでは発病しないのです。感染しても90%以上の猫はウイルスを自分の力で殺してしまい、いつの間にか感染は終わってしまうのです。それではなぜ一部の猫が発病するのかというと、これはよくわかっていません。多分ストレスその他のファクターが一緒になって発病するのだと考えられています。ですからワクチンがない以上、猫を感染から守るのは事実上不可能でしょう。ただし家の中で飼っている猫ならば、毒力の強いウイルスとの接触は避けることができるでしょう。発病した猫の治療は、本当に有効な方法がまだ見つかっていないので、症状を和らげる対症療法が主体となります。というのも、猫の体内のウイルス自体を殺す薬はないし、またどのようにして発病するのか不明な点が多いからです。したがって病気の進行を遅らせ、猫の不快感をある程度改善する効果は期待できますが、完治の為の治療ではないことを理解して下さい。獣医師は全身状態を評価した上で、治療が可能かどうか判断します。

猫免疫不全ウイルス感染症
症状 人間やサルのエイズウイルスと同類のウイルスによっておこる様々な慢性疾患が特徴です。病気が進行して末期にはエイズと考えられる症状を出す猫もありますが、人間のエイズとは似ていても別の病気であり、ウイルスも別のものです。人間のエイズウイルスが猫に感染したり、猫のこのウイルスが人間や犬に感染することもありません。ウイルスは猫同士の接触により感染するようで、ほとんどの場合唾液を介して咬み傷から感染する模様です。感染源はおそらく屋外を自由に歩き回っている猫のようです。これまでの調査では、外に出ない猫ではまず感染が見つかっていませんが、わが国では外に出ている猫が多く、しかも野良猫・捨て猫を含めて猫の密度が高いので、おそらく世界中でも異常に高い感染率ではないかと思われます。感染すると最初の1年間位は、リンパ腺が腫れたり、軽い下痢が続いたり、細菌感染などを繰り返しますが、そのうち症状がなくなることが多く、外見上はふつうの猫と区別がつきません。それから数年してだんだん慢性の病気が進行します。病状の進んだ猫で一番多い症状は口内炎です。口の中に潰瘍ができたり、歯肉が盛り上がったりして、口臭、よだれが目立ち、餌をたべる時に痛がります。また何でもない傷が化膿したり、眼や鼻からいつも分泌液を出していたり、あるいはやせ細ったり下痢や熱が続いたりすることがよくあり、病気に対する抵抗力の減退が特徴です。感染していながらかなり長生きするものが多いのも事実です。ただいろいろな病気が起こるので、統計的には感染していない猫よりも死亡率が高く、平均寿命も短いでしょう。このウイルスに感染していること=エイズではないのです。発症していないものは無症状キャリアーと呼び、発病猫とは区別しています。軽い発病だけがみられるものも多くあり、このようなものはエイズ関連症候群と呼ばれます。病気がひどくなって、いわゆるエイズの基準を満たすもののみがエイズと診断されるので、それほど比率は高くありません。エイズの時期に入る前ならば、現在の状態次第では治療法も考えられます。したがって救いが全くないわけではないのです。ただし、ウイルス自体を攻撃する治療法は現在のところありません。まず、現在発病していなければ、小さな問題が生じるたびに正しい対症療法を行ってゆけば、これから先かなり生きられるのではないかと思われます。また発病していても、症状にもよりますが、抗生物質などで治療可能のものもあり、実際に治療によってその場は命をとりとめる場合もあるのです。猫免疫不全ウイルス感染症は急性の感染症ではないので、若い猫が急に死亡するようなことはあまりありません。感染しているかどうかは血液の検査でわかります。
予防 ワクチンはなく、家の外には感染した猫が多いので、猫を外に出さないことしか予防法はありません。ただけんかの傷からの感染が多いので、家の回りに猫がそれほど多くなく、けんかをしない猫ならば外に出してもさほど危険はないでしょう。猫のけんかは、縄張り争いや雌をめぐっての争いなので、原因がなければそうけんかはおこらないでしょう。感染した猫は家の中でストレスを避けた飼い方をすれば、寿命も延びるかもしれません。感染した猫と感染していない猫がいる場合には、できるだけ接触は避けるべきです。

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ワクチンのある伝染病

  • 2008年09月07日(日)16時35分
  • by 夕陽丘 院長 兼 管理者

 猫のかかるウイルス病のうちいくつかは、ワクチンで予防できます。現在日本で使用できるワクチンは5種類の病気を予防できるものです。生まれたての子猫は、ふつう母親のミルクで親譲りの免疫をもらい、離乳する頃まではこれでいろいろな病気から守られています。しかし、離乳するころになると親譲りの免疫は効き目が薄くなり、全くの無防備になりますから、早めに獣医師とワクチン接種の時期について相談し、確実に病気から守られるようにしたいものです。

1.FPV 猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)
2.FVR 猫ウイルス性鼻気管炎
3.FCV カリシウイルス感染症
4.FeLV 猫白血病ウイルス感染症
5.Feline Chlamydia 猫クラミジア感染症

1.猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)
症状 猫汎白血球減少症ウイルスという猫のパルボウイルスが原因の病気です。とくに子猫や若い猫が発病しやすくウイルスに感染してから短い潜伏期間で(数日)急に症状が出ます。またきわめて伝染力の強いウイルスが原因なので、同腹の子猫が次から次へと発病することも珍しくありません。最初の症状は元気と食欲がなくなることで、水も飲まなくなり、じっとうずくまった状態になります。このときさわってみると熱があるのがわかるかも知れません。次第に嘔吐が激しくなり、脱水症状がみられるようになります。下痢はあるものとないものがあるようです。激しいものでは血便がみられることもあります。この病気では体が細菌などと戦うために必要な白血球が非常に少なくなるので汎白血球減少症という正式の病名がつけられていますが、白血球がなくなったために、いろいろな病原体に対する抵抗力が一次的に下がります。この時期に脱水がひどくなり、体温も低くなると良くない兆候で、不幸にして助からない猫もたくさんあります。病院では血液の白血球数を調べ、水分、栄養の補給に努め、猫自身の力でウイルスに打ち勝つのを助けるようにします。回復した猫には強力な免疫ができ、終生この病気にはかからなくなります。妊娠中の母親が感染すると、ウイルスは胎盤を越えて胎児にかかり、流産や死産がみられたり、分娩の前後に子猫に感染すると、脳に異常を持つようになることがあります。
予防 猫汎白血球減少症のワクチンが猫用ワクチンとしては一番古くからあり、多くの猫が接種をうけ、確実に予防効果がみられています。しかしながら一方では、ワクチン接種を受けない野良猫、捨て猫が屋外で増え続けています。このようなワクチン接種を受けていない猫がいる間は、ウイルスは次々に感染して行って絶えることはないでしょう。したがって家から一歩出れば、そこはウイルス汚染環境です。とくに猫汎白血球減少症の原因となるパルボウイルスは強いウイルスで、人間の靴についてどこにでも行って、そこに無防備な猫がいれば感染してしまいます(洗剤やアルコールでは死なず、ブリーチかホルマリンしか効果がありません)。このような恐ろしいウイルスから猫を守るためには、厳重に家の中に閉じこめて玄関にも出さないか、あるいはワクチン接種をすることしかありません。厳重な閉じこめというのは現実的ではありませんし、実際に高層マンションで飼われている猫でも発病があることから、人間が道に落ちているウイルスを運んでしまうことは防ぎようがないと思われます。したがって子猫の時期から正しいワクチン接種を行なうのがベストで、現在健康に暮らしている猫の多くは、そのようにして守られているのです。

2. 猫ウイルス性鼻気管炎
症状 猫ウイルス性鼻気管炎の原因ウイルスは猫のヘルペスウイルスで、感染猫のくしゃみ、分泌液などから感染します。このウイルスにかかると3-4日で急に元気・食欲がなくなり、熱も上がります。そして鼻水が出るようになり、くしゃみも激しくなります。目も涙眼になって、結膜炎がおこります。よだれを出す猫もいます。症状が始まってから3-4日で一番病気は激しくなり、通常はその後 1週間位で回復します。子猫ではものが食べられずに脱水や衰弱が激しいと生命に危険もあります。また抵抗力がなくなり、細菌感染が一緒におこると、症状が激しくなったり病気が長引くこともあります。病院では分泌液で汚れた眼や鼻をきれいにして、脱水や栄養不良があればそれを治し、細菌感染を予防・治療して、猫が自分で病気を治して行くのを助けます。一般に急性の経過で病気が終わるのは、猫にウイルスに対する免疫ができるからです。ところがこの免疫がくせ者です。体の中に免疫ができると通常はウイルスは殺されてしまうのですが、ヘルペスウイルスはなかなか賢いウイルスで、神経細胞の中に隠れてしまうのです。人間でもヘルペスウイルスはこのような悪さをして、体の中に居ついてしまうことがよく知られています。隠れてしまったウイルスは、時間が経って猫の免疫が下がってきたときに、あるいは猫がストレスを受けたときに、またのそのそと出てくるのです。一度免疫ができている猫ではすぐにまた免疫が上がるので、このとき症状が出ることはないのですが、困ったことにウイルスを体外に出して、他の猫に移してしまうことがあるのです。ここで症状が出ないということは、外見上どの猫がウイルスを出しているかはわからないということです。ですから、一度この病気にかかった猫というのは、免疫も持っているが、ウイルスも持っている、すなわち感染源になるということを知っておく必要があります。
予防 予防の原則は感染源との接触を絶つこと、ワクチンで予防することです。くしゃみ・鼻水・涙眼という症状が出ている猫ならば一目で感染源とわかりますが、問題は前に述べた一度かかって後から無症状のままウイルスを放出するものです。昔はこのウイルスのワクチンがなかったわけですから、現在中年から老年の猫というのは、ほとんどが一度はかかったものと考えられ、その多くがたまにウイルスを放出している可能性があります。

母親が以前この病気にかかったことがあると免疫ができているので、子猫にはミルクを介して親譲りの免疫が伝えられます。したがって子猫は大体離乳までくらいは病気から守られますが、それ以上長続きするものでもありません。離乳の頃母親は、それまでの子育ての疲れがどっと出て、ストレスのたまった状態になります。そうするとウイルスはこの時とばかりに活動をはじめ、鼻の粘膜から外に出てきます。するとちょうど無防備になった子猫にウイルスは移ってしまうのです。このようにしてウイルスは猫から猫へ渡り歩き、猫の集団内にすっかり定着してしまうのです。このように、感染源がはっきりわからない場合、あるいは母と子のようにきわめて近い距離にある場合、感染源を絶つというのは現実的ではありません。そこで、ワクチンでこれから生まれてくる子猫をすべて守って、ウイルスの行き場をなくしてしまおうというのが、新しい予防の考え方です。多くのウイルスというのは、動物の体を離れてしまえば比較的弱いもので、行き場がなくなれば自然に消滅してしまいます。現にこのワクチンが最初に開発されたアメリカでは、動物病院に来る猫のほぼ100%ワクチン接種を受け、最近ではこの病気を見ることもほとんどなくなりました。効果的にウイルスを撲滅するためには、みんなが一致団結して行動を起こすことが必要です。すなわち1頭1頭の免疫ではなく、世界中の猫の集団の免疫を高め、ウイルスが逃げて行く所をなくすことが必要なのです。

3. カリシウイルス感染症
症状 猫のカリシウイルスが原因のこの病気はいろいろな症状を引き起こし、一部はヘルペスウイルスによるウイルス性鼻気管炎によく似ているもの、一部は激しい肺炎で子猫が死亡するものなど、いろいろな型があります。これは流行するウイルスの型で病気がそれぞれ異なるためです。これまで知られている型としては、鼻気管炎と似た症状を起こすもの、口の中に潰瘍を作るもの、肺炎をおこすもの、腸で感染してとくに症状は出さないものがあります。感染は他の病猫との接触などによりおこりますが、感染の機会があってから約3日の潜伏期で症状が出ます。発熱、元気・食欲の低下は症状を出す3つの型に共通していますが、その他の症状は多様です。涙や鼻水、結膜炎、舌・くちびる・口の中・鼻の頭の潰瘍、肺炎(子猫がじっとうずくまり呼吸が荒くなったら要注意)のいずれかが見られます。普通は約2週間以内には回復しますが、肺炎をおこしたものでは死亡することがよくあります。回復した猫では免疫ができ、その後症状を見せることはありませんが、ヘルペスウイルスと似てウイルスが長く居座ることがあります。ヘルペスウイルスの場合は潜伏ですが、カリシウイルスの場合は持続感染といって、常にわずかな量のウイルスが体外に出されます。したがってカリシウイルス感染症の場合も一度かかった猫は免疫も持っているがウイルスも持っていて、他の猫に対して感染源となる可能性があることを覚えておきましょう。病院での治療はウイルス性鼻気管炎の場合とほぼ同様ですが、肺炎がひどくなると、最善の努力にもかかわらず命を落とす猫もいます。
予防 予防はウイルス性鼻気管炎の場合と全く同じです.ヘルペスウイルスよりもやや強いウイルスなので,環境の消毒にも注意した方が良いかも知れません.洗剤やアルコールではカリシウイルスは死なないので,消毒にはブリーチかホルマリンが必要です.病気のねこのシーツなどは,ブリーチにつけてから洗濯するのがよいでしょう.ねこの3種混合ワクチンにはカリシウイルスも入っていますので,子ねこの時からきちんとワクチンを行っておけば安心です.いろいろな型のウイルスがいても,呼吸器病を起こすタイプのウイルスに対しては,すべて免疫ができます.とくに恐ろしい肺炎からねこが守られるというのは重要なことです.そして,自分のねこにワクチンを受けさせるということは,ねこの集団の免疫を高め,ウイルスに感染する猫を減らし,ウイルスの行き場所をなくすことだということを再認識しましょう.
*7種ワクチンにはカリシウイルスの3タイプのウイルスを混合しており幅広く予防できるようになっています。

4.FeLV 猫白血病ウイルス感染症
症状 猫白血病ウイルスという名前から想像できるとうり、白血病の原因となります。しかし白血病だけでなく、貧血や免疫力の低下、流産、腎臓病などいろいろな病気の原因になり、感染・発病した猫は3-4年以内に死亡します。ただし感染しても治ってしまう猫もたくさんいることを覚えておく必要があります。これは感染したときの猫の年齢と深い関係があります。生まれたてで感染するとほぼ100%が持続感染になります。持続感染というのは常にウイルスが体のどこかで増えている状態をいいます。このような猫は発病しやすくほとんど死んでしまいます。ところが離乳期を過ぎて感染した場合は約50%しか持続感染になりませんし、1歳以上の猫では10%しか持続感染になりません。このような性格のウイルスなので症状といってもひとことでは言い表せません。感染して最初の1-2カ月は、熱が出たり食欲がなかったりというように他のウイルス感染と同じような症状ですが、重大な病気はもっと後になってから出ます。直りにくい慢性の病気、常に病気がち、貧血などがみられたらこのウイルスも疑って検査を受けるのがよいでしょう。
予防 最近ワクチンが開発されました。ただし既に感染してしまっている猫には無効ですので注意してください。感染した猫は血液検査によって簡単に発見できます。感染源と接触させないというのが有効な予防法となります。感染した猫は唾液の中にウイルスを出すので、同居していて常になめ合っていれば感染することがあります。家の中に猫白血病ウイルスに感染した猫がいる場合には部屋を分けたりする必要があるでしょう。外にいる野良猫は感染しているものはそう多くなく、また弱いウイルスなのですれ違った位で感染する心配はありませんが、やはり危険はあるので抵抗力の弱い1歳未満の猫の外出は注意した方がよさそうです。検査の結果、猫白血病ウイルスに感染しているといわれた場合には、猫の体の中で目には見えない障害が起こり始めている可能性があります。ですから外に出て悪い病気を拾ってこないように、また他の猫にウイルスをうつさないように、家の中で生活させてください。人間や犬への危険はありません。治療としてウイルスを打ち負かす治療法はありませんが、この感染症のいろいろな病気の場合、ウイルスは裏で暗躍しているだけで、現在の重大な病気には直接関係していない場合も多いのです。ですから白血病があれば化学療法を行いますし、激しい細菌感染があれば抗生物質の投与を行います。

5. 猫クラミジア感染症
クラミジアという細菌による感染症で菌は眼や鼻から侵入するため、結膜炎、鼻汁、くしゃみ、咳がみられます。肺炎を起こすこともあります。猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症と同じような症状を示し、混合感染していることもあります。結膜炎は2~6週間続きます。また、ヒトに感染して結膜炎が起きた例も報告されています。

猫のワクチン接種について
 子猫の接種時期は原則的には生後8-10週に第1回、1カ月後に第2回ですが、かぜの症状を出している猫が多数同居している場合など状況によって変わり、また3回接種が必要な場合もありますので、獣医師に相談して下さい。その後は年1回の追加接種が必要です。成猫の場合は健康ならばいつでも接種可能です。また1度かぜのような症状を経験したことのある猫は、すでにウイルスにかかっていて、免疫ができている可能性も考えられますが、2種類のどちらかだけの免疫しかできていないとしたらもう一方には無防備ですのでワクチンを接種した方がよいでしょう。またすでに免疫ができているとしても、ワクチンで免疫の追加をしてやるわけですから、免疫の持続期間が伸びます。かりにウイルスが居座っている猫でも、免疫を高めることによってウイルスをより強力に封じ込める効果があるでしょう。
 ワクチン接種は健康な猫だけに行なうべきですが、注射当日は激しい運動、シャンプーなどは避けるようにします。まれに過敏な猫では注射後に元気がなくなったり、食欲がなくなったりすることもありますが、症状が長く続くようでしたら病院に連絡するのがよいでしょう。妊娠している猫にはワクチン接種をするべきではありませんが、生まれてくる子猫がことごとく感染してしまうような問題のある家庭では、雌猫に交配前に接種して免疫を高め、子猫に強い親譲りの免疫が伝えられるようにすることもひとつの手段でしょう。
ワクチンを接種したからといって、不必要に症状を出している猫と接触させたりするのは避けてください。ワクチンを接種してあっても、ごく軽い症状が出ることもあります。免疫があるのでウイルスが体内奥深くまで侵入することはありませんが、呼吸器感染症ウイルスの場合は眼の表面で少し感染して涙眼になったりすることはあります。猫汎白血球減少症は体内でおこる病気なのでワクチンで完全に防げます。 

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血液凝固試験で異常が検出された症例

  • 2008年08月20日(水)19時30分
  • by 中津動物病院 院長

ファイル 98-1.jpg

全身麻酔前の必須の検査として、現在の状況を把握する為に総合的な血液検査の他に、血液凝固試験を行っています。最近の症例で、歯石付着がひどく、不快な口臭で飼い主を悩ませていました。こうした症例は歯石を除去するとともに、同時に起こっている歯周病を治療する必要が有ります。全身麻酔下での処置となります。また幾分出血を伴いますので、血液が通常の速度で凝固し、止血が順調に進むか予め検査しておかなくてはいけません。凝固不全は滅多にない病気で、おそらく1万頭に1頭位の頻度(0.01%)で見つかるかもしれないほどです。抜歯した後、出血しすぎてで死亡する危険があります。今回は麻酔直前の検査で把握できましたので、歯石除去の治療は中止しました。この動物に事前の検査なしで抜歯をしておれば極めて危険な状況を招くところでした肝臓で作られている止血に関係する酵素が不足している状況が判りました。今後は遺伝的な背景が有るのか、肝臓の蛋白合成機能が低下している為か検査を進めていき、治療します。うまく血液が固まるようになれば、歯石除去の治療を再開できます。

    ネコの正常値      測定値     
PT   9.3-11.3(秒)       10.2
aPPT  20.0-42.0(秒)      105.5
Fib.  120-240(mg/dl)      369
TB   18.8-30/2(秒)      21.1
HPT   15.0-30.7(秒)      19.8


測定値の解釈

         aPTT     病態
PT正常値   正常   血管・血小板の異常
PT正常値   延長  Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子の異常

aPPTの明らかな延長が有りますから、肝臓由来の
 Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子のいずれかに異常あります。特定する為には遺伝
子検査や各因子濃度の測定が必要になります。
なおフィブリン値が上昇しているのは口内の炎症を反映しています。

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横隔膜ヘルニア

  • 2008年08月08日(金)17時24分
  • by 夕陽丘 院長 兼 管理者

種類

猫、日本猫
性別
雄
年齢 体重 7歳齢、5kg
症状

猫が散歩から帰ってきたら、呼吸状態がおかしいことに気づいて来院。
呼吸速拍、可視粘膜ややチアノーゼを示す。ぐったりして自力歩行不可。
FCRと稟告により外傷性による横隔膜ヘルニアと診断。

処置 緊急手術。腹腔よりアプローチし、横隔膜が裂けているところを3-0のMaxonで縫合。
閉胸時に低圧吸引により胸腔内の抜気、腹部臓器は肝臓が点状出血が少々あるが他の臓器は肉眼観察上問題ない様子。そのまま閉腹。
経過 麻酔覚醒後、呼吸状態は非常に良好。チアノーゼ(-)。3日間経過観察後退院。

考察

呼吸障害を伴う横隔膜ヘルニアは緊急手術が必要な疾患である。呼吸がかなり良好なときでも、胸腔内は陰圧になるために腸の流入が起こりやすく急に呼吸が悪化することがあるため、注意が必要である。
先天性の横隔膜ヘルニアとの鑑別が必須である。先天性は若令、外傷の可能性がない虚弱などで判別するしかないが、開腹時の横隔膜の損傷具合でも判別できる。先天性の場合、胎児循環遺残症により予後不良の場合が多い。


受傷後FCR写真
胸腔内は通常中心に心臓陰影がありその周囲が肺野領域に小腸が流入している(←)
その分、腹腔が小さくなっている。


手術直後のFCR写真
横隔膜が修復され胸腔内の心臓陰影がはっきり映っている。コードは心電計のリード線。
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