記事一覧

ウサギの感染症 10 脚瘤症

ウサギの足裏は全面被毛に覆われています。
ファイル 165-1.jpg
ウサギは常に後脚で体を支えて生活している動物です。そのため常に脚裏は圧迫を受けていると言えます。この体の構造が脚瘤症発生素因としてどの個体にもあります。そして、ざらざらした凹凸の多い不適当な床面と体重の増加(過肥)さらに床面が尿や糞でぬれた不潔な状態が持続しますと被毛の撥水性が失われて尿が皮膚面に到達し、湿疹になります。そして毛が抜け落ちて、皮膚は赤く炎症を起こしてきます。さらに原因が持続すると皮膚が剥がれ、下の腱が見えてきます。激しい痛みをとも舞います。また炎症で膿が作られ、膿がさらに周辺組織を融解して炎症が深部と波及してゆきます。さらに時間が経過します骨膜炎、骨髄炎と悪化が進みます。
ファイル 165-2.jpg
ウサギは皮膚炎の段階から痛みを感じて前足に体重をかけて、少しでも痛みを和らげようとします。前足は本来は余り持続して体重をかけていませんので、簡単に後脚と同じ症状を呈します。
ファイル 165-3.jpg
脚瘤症は足底皮膚炎あるいは足皮膚炎とも呼称されます
家庭で出来る対策としては、乾き易い平滑な床材に替えます。例えばプラスチック製の台所用のまな板がよいでしょう。複数用意して、尿や糞が付いたら、直ちに交換して、常に乾燥した床面にしておきましょう。
発泡スチロールは当たりが柔らかく非常に良い材質ですが、ウサギによって齧って、粉々にするかもしれません。こうした個体には使わない方が良いでしょう。
また、過肥にならないようにしましょう。それには牧草(チモシーあるいはアルファルファ)を多く与え、バナナ、イモ類等のでんぷん質は極力減らした食餌内容を続けて下さい。過肥であれば、獣医師の指導を求めて、その指示の元で減量に努める事です。アメリカでは重症例ではその疼痛と治癒不可能の為に、動物福祉の観点から安楽死も考慮されている疾患の一つです。
しかし、我々中津動物グループでは画期的な治療法を発見しました。

浅香山動物病院の磯部看護士による画期的アイデア
安楽死も考慮される様な深刻な重度の脚瘤症で入院治療中のウサギのケージにある日うっかりとミルク缶をおいたまま、その場をしばらく離れていたところ、このウサギは、この缶にお腹を乗せて、後脚の足裏を浮かせている光景を目撃しました。磯部看護士はこの状況を見逃しませんでした。直ちに獣医師に報告し、今度は故意にケージ内にミルク缶を安定した台に設置して置いておきました。このウサギは多くの時間をこの缶の上にお腹を乗せて、足裏を自分で浮かせていました。こうする事で痛みから開放される事が学習されたのです。このウサギは難治と言われた重度の脚瘤症から完治しました。今では,診察台の上で、ティッシュペーパーの箱に腹部を乗せてしばらく置いておきます。これを何回か繰り返して練習します。
ファイル 165-4.jpg
ファイル 165-5.jpg
そして、ベニア板に四角い角材をネジ留めした安定した台をケージ内に設置し、時々ウサギを乗せてやると、やがてウサギは自分から乗り始め、足裏への負重を避けて、痛みから開放され気持ち良さそうに乗っています。磯部看護士のアイデアは画期的で今では治癒可能な疾患の一つになりました。こうして台に乗る事を練習したウサギはそのまま日課的に乗る事を好む個体と、横臥姿勢になって足裏を投げ出して、痛みから開放される姿勢をとる事を好む個体がいます。