ウサギにおける抗生物質に使い方
外傷、手術時の感染防止、感染症の治療として抗生物質の使用頻度は日常の治療手段として極めて高い。その際特に注意する点は、ウサギは発酵動物であるという点である。他の動物ではセルラーゼを欠損する為に利用できない植物繊維のセルロースを、これら酵素を有する原虫や微生物を盲腸内に保有して分解してもらって栄養化している。こうした発酵動物への抗生物質投与は有用な微生物を殺傷するだけでなく、一部有害なクロストリジウム属の細菌の増殖を招ねく恐れがある。したがって使用に際しては抗菌スペクトラムの広い抗生物質を使用すべきである。推奨されている抗生物質と使用禁忌の抗生物質は以下の通りである。
推奨されている抗生物質としては:
クロラムフェニコール
エンロフロキサシン
オルビフロキサシン
ポリミキシン
ドキシサイクリン
サルファ剤
使用禁忌の抗生物質としては
アモキシシリン、セファロスポリン、
クリンダマイシン、エリスロマイシン、
リンコマイシン、ペニシリンで点眼液に含まれる抗生物質にも留意する必要がある。
点眼された禁忌の抗生物質は涙管を通じて鼻から咽頭、更に食道、胃と流れていくかも知れない。食欲不振の原因の一つに腸毒血症が挙げられている。これは腸内細菌叢が崩壊して、Clostridium spiroforme、Clostridium. perfringensやClostridium. difficileが増殖して菌体外毒素を産出しておこる。腸内のpHが低下し、蠕動の亢進による激しい下痢、脱水、時に6-12週令の幼獣ではストレスで本症を発症し、いずれもに死に至る事がある極めて深刻な病状である。時に便はタール状で、大量の粘膜の排泄、高度な鼓腸が特徴である。
糞便の圧迫標本作製すると半透明な腸粘膜の検出が容易となる。こうした腸毒血症の原因菌のClostridium spiroforme、Clostridium. perfringensやClostridium. difficileの増殖は、食餌の急変、気温の変化、離乳時のストレス、抗生物質の使用で起こる。抗生物質の使用で起こる場合は医原性腸毒血症と呼ばれる。
トポネーマ症の治療にはペニシリンGが推奨されている。しかしこの抗生物質は使用禁忌に入っているので、万一下痢を発症する際にはエンロフロキサシンの様な使用可能の抗生物質を追加しようして、クロストリジウム属の細菌の増殖を阻止する。または当初から併用して発症を予防する事が肝要である。生まれて間もない17g仔ウサギの急性鼓腸症の治験例が当院から公表されている。
発酵に少しでも依存して生活している動物にはウサギの他にハムスター、ラット、マウス、リス類、ジャービル、モルモット、チンチラ等のげっ歯類の仲間が多い。