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ウサギの獣医学:抗生物質の使い方

  • 2009年12月26日(土)08時01分
  • by 中津動物病院 院長

ウサギにおける抗生物質に使い方
外傷、手術時の感染防止、感染症の治療として抗生物質の使用頻度は日常の治療手段として極めて高い。その際特に注意する点は、ウサギは発酵動物であるという点である。他の動物ではセルラーゼを欠損する為に利用できない植物繊維のセルロースを、これら酵素を有する原虫や微生物を盲腸内に保有して分解してもらって栄養化している。こうした発酵動物への抗生物質投与は有用な微生物を殺傷するだけでなく、一部有害なクロストリジウム属の細菌の増殖を招ねく恐れがある。したがって使用に際しては抗菌スペクトラムの広い抗生物質を使用すべきである。推奨されている抗生物質と使用禁忌の抗生物質は以下の通りである。
推奨されている抗生物質としては:
クロラムフェニコール
エンロフロキサシン
オルビフロキサシン
ポリミキシン
ドキシサイクリン
サルファ剤

使用禁忌の抗生物質としては
アモキシシリン、セファロスポリン、
クリンダマイシン、エリスロマイシン、
リンコマイシン、ペニシリンで点眼液に含まれる抗生物質にも留意する必要がある。

点眼された禁忌の抗生物質は涙管を通じて鼻から咽頭、更に食道、胃と流れていくかも知れない。食欲不振の原因の一つに 腸毒血症が挙げられている。これは腸内細菌叢が崩壊して、Clostridium spiroforme、Clostridium. perfringensやClostridium. difficileが増殖して菌体外毒素を産出しておこる。腸内のpHが低下し、蠕動の亢進による激しい下痢、脱水、時に6-12週令の幼獣ではストレスで本症を発症し、いずれもに死に至る事がある極めて深刻な病状である。時に便はタール状で、大量の粘膜の排泄、高度な鼓腸が特徴である。
糞便の圧迫標本作製すると半透明な腸粘膜の検出が容易となる。こうした腸毒血症の原因菌のClostridium spiroforme、Clostridium. perfringensやClostridium. difficileの増殖は、食餌の急変、気温の変化、離乳時のストレス、抗生物質の使用で起こる。抗生物質の使用で起こる場合は医原性腸毒血症と呼ばれる。
トポネーマ症の治療にはペニシリンGが推奨されている。しかしこの抗生物質は使用禁忌に入っているので、万一下痢を発症する際にはエンロフロキサシンの様な使用可能の抗生物質を追加しようして、クロストリジウム属の細菌の増殖を阻止する。または当初から併用して発症を予防する事が肝要である。生まれて間もない17g仔ウサギの急性鼓腸症の治験例が当院から公表されている。

発酵に少しでも依存して生活している動物にはウサギの他にハムスター、ラット、マウス、リス類、ジャービル、モルモット、チンチラ等のげっ歯類の仲間が多い。

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ウサギの獣医学:涙管閉塞と流涙症

  • 2009年12月18日(金)14時46分
  • by 中津動物病院 院長

ウサギの流涙症は日常よく観察される。。下眼瞼の鼻側角(内觜)に隣接して奥に向かう2本の白い線状の隆起に囲まれて1カ所開口している。主な原因は涙管の閉塞である。更新剥離した角膜や結膜細胞や眼脂等ので閉塞する。あるいは上顎切歯の歯根が病的に伸びすぎると、涙管の鼻腔への開口部を閉塞して起こる。咬合圧の低下(ペレット食の多給)や切歯の折損によって根尖部の形態に変化が起きて、萠出が出来ずにその場で瘤状の異所性石灰化が起こる。これも涙管開口部の閉塞を招く。涙が眼瞼から皮膚側にこぼれると、周辺皮膚に湿疹を起こし、脱毛して赤くなる。乾燥に努める事が悪化を防ぐ。
治療と類症鑑別
ベノキシールを1分間隔で数回滴下して、表面麻酔を施す。22〜24Gの留置針の外套を下眼瞼の涙管開口部に充分深くまで挿入する。これに延長管(エクステンションチューブ)をつなぐ。温生食水10mlを注射筒にとったものでゆっくりと加圧すると、外鼻孔から白い脂肪成分を含む涙液が排泄される。数回繰り返し洗浄し最後に、タリビット点眼液か点眼軟膏を塗布する。うまく通らないときはレントゲン撮影して、切歯の根尖の様子観察し、上記の異常所見の有無を検査する。上顎切歯の根尖に病変に由来する涙管閉塞は切歯の抜歯がうまく成功しない限り、治癒は難しい。

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衛藤夕夏 退職のご挨拶

  • 2009年12月15日(火)09時57分
  • by eto

このたび12月末日をもって、中津動物病院を円満退職することになりましたので、ご挨拶申し上げます。
就職して、4年間、未熟な私ですが、病院の皆様のご指導、患者様方の温かい励ましのおかげで、ここまで続けてこられたと、感謝しております。
皆様の御健康、ご多幸を御祈りしながら、書中をもって、退職のご挨拶にかえさせていただきます。

衛藤 夕夏

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東樋口獣医師が円満退職します。お世話になりました。

  • 2009年12月11日(金)19時10分
  • by wada

 この度、12月末日をもちまして、中津動物病院を円満退職することになりました。在職中は、病院スタッフをはじめ、飼主様、動物達にたくさんのことを教わり成長させていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
略儀ながら書中をもってお礼と退職のご挨拶とさせていただきます。

     平成21年12月11日 中津動物病院 獣医師 東樋口枝実子

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12月の診療日程について

  • 2009年11月19日(木)11時41分
  • by 中津動物病院 院長

中津動物病院では、以下の日程で院長の診察が休みになります。

12月20日(日) 愛知県獣医師会主催で[明日からの飼鳥診察に役立つ野鳥救護]の講演を行います。従いまして当日の院長の診察はお休みになります。

大阪ペピイ動物看護専門学校の授業が毎週木曜日と金曜日にあります。いずれも院長診察は11時までとなりますのでご了承を願います。午後診は通常通りです。毎週水曜日は院長の休日です。

夕陽丘動物病院
◎12月30日より1月3日まで休診です。

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中津動物病院の年末年始の休業について

  • 2009年11月19日(木)11時38分
  • by 中津動物病院 院長

中津動物病院は年末は12月29日まで診察しております。1月は4日からの診察になります。5日間のお休みを頂きますのでご了承をお願いいたします。       院長   中津 賞

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広島県における傷病野生鳥獣保護飼養ボランティア養成講座

  • 2009年10月30日(金)17時32分
  • by 中津動物病院 院長

NPO野鳥の病院では地球環境基金の助成を受けて、広島県で初めての表題の講座を開講します。野生動物救護に関心のある方々の多数の御参加をお願いします。

傷病野生鳥獣保護飼養ボランティア講習会のご案内
野外で飛べない野鳥を見つけたときの対処方法、獣医師での治療終了後野生復帰するまでの飼育についての講習会を開催いたします。多くの方々の参加をお待ちしています。

日時:11月15日(日曜) 10時〜16時
場所:広島県尾道合同庁舎(尾道市古浜町26-12)
参加定員:30名 (要申し込み)
参加費用:無料  
プログラム:午前 講義
・広島県における野生動物救護の現状と法律 
    講師:広島県環境部自然環境課  相良 伊知郎 主任主査
・広島県で救護例の多い野鳥について
    講師:鳥類・生態系研究者 農学博士  飯田 知彦 先生
・傷病野生鳥獣保護飼養ボラティアに必要な救護技術について 
  講師:NPO法人 野鳥の病院 代表理事 獣医学博士 中津賞
      午後 実習
・野鳥の安全な取り扱いと保定法、日常の管理、給餌法 他
実技指導:NPO野鳥の病院所属 獣医師・上級動物看護士

主催:尾三地域獣医師会開業部会
   NPO 野鳥の病院
申し込み方法
下記のいずれかに11月10日までにお申し込み下さい。
村井 厚士  〒722-0015 広島県尾道市吉浦町3-9 
        Tel 0848-22-6626  Fax 0848-22-6656
e-mail vet@bbbn.jp

NPO野鳥の病院  〒590-0960 堺市堺区少林寺町西2丁2-15
e-mail nakatsu@nakatsuvet.com

・NPO法人野鳥の病院から修了証が発行されます。
・参加資格は18歳以上、その他、特にありませんが妊娠中の方はご遠慮ください。
・当日は、汚れても構わない服装、運動靴などでお越し下さい。(もしくは着替え持参)
 地球環境保全機構、地球環境基金からの助成金で運用されます。

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11月の診療日程について

  • 2009年10月18日(日)11時07分
  • by 中津動物病院 院長

中津動物病院では、以下の日程で院長の診察が休みになります。
11月11日(水)東京 野生動物輸入規制に関する会合
11月15日(日)広島 傷病野生鳥獣救護ボランティア養成講座
11月28日(土)東京 日本野生動物医学会 理事会
大阪ペピイ動物看護専門学校の授業が毎週木曜日と金曜日にあります。いずれも院長診察は11時までとなりますのでご了承を願います。午後診は通常通りです。毎週水曜日は院長の休日です。

いずれの日も勤務医による診察は行っております。

夕陽丘動物病院
◎11月22日は動物臨床医学界のため休診です。
◎11月23日は祝日のため休診です。

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外国産野生動物をペットとしての輸入規制について

  • 2009年09月30日(水)13時26分
  • by 中津動物病院 院長

○ ペットとしての野生動物の輸入規制について
 新しい活動方針としてペットとしての野生動物の輸入規制を働きかけたいと考えています。日本には日本固有の、各地方にはその地域固有の生物が棲息しています。固有種の保全は、ある地域においてある特定の種類が絶滅に近いといって、日本国内の他の地域から新たに同種を導入することも真の固有種の復活にはなりません。遺伝子的な多様性が失われたり、混合してしまいます。日本は小さな島国です。島国ほど外来種の侵入に脆弱であると言われています。例えばニュージーランドは日本と同じような環境を持っています。しかしその生息生物は外来種が60%を占め、固有種は外来種の影響を受けて、その生息数と生息域を狭めています。食べ物を見てみますと、木の枝先の柔らかい若葉を食べる種類、樹木を食べる昆虫、地下に生息して根から樹液を吸入する昆虫等その食性を分け合って生活しています。この生活分野をニッチと言います。狭い島ではこのニッチが空いている場合に外来種が入り込むと競合生物がいないために、急速その生息数を増やすことができます。またニッチが重複する場合には、在来種が駆逐される可能性があります。近縁の種類では遺伝的な交雑がおこる危険性があります。例えば、飼育施設から逃げ出したタイワンザルが日本固有種のニホンザルと混血して、ニホンザルの群れに有尾のタイワンザルの特徴を持つ子孫が認められることがあり、問題になったことは記憶新しいことです。こうした遺伝的な混乱以外に、外来野生生物はもう一つ表に出にくい重要な問題を抱えています。それはこの生物に付着したり、または体内微生物として一緒に侵入してくることです。例えば、ハリネズミはその皮膚に日本には未発見であった真菌性皮膚炎を起こすカビの1種を持っています。ヒトへの感染例も数多く報告されています。対表に付着し吸血するダニは、その体内に多くの病原体を持っています。その中にはヒトやペットの動物に深刻な伝染病を引き起こす可能性があります。まだまだこの世の中には未知の病原体があり、これらが持ち込まれる可能性も否定できません。こうして見ますと、外国の野生生物を輸入することは、捕獲した現地での野生生物の減少あるいは絶滅を早めるだけでなく、輸入国の野生生物やヒトにも深刻な問題を引き起こします。輸入生物の中には食料として、あるいは産業の材料として重要な資源であることでもあり、一概に輸入が悪いとは決めつけられません。しかしペットとして外国産野生生物を輸入することの規制は出来るはずです。私たち日本人の悪いところは、飼育に飽きるとその生物を野外に放すことです。カミツキガメが日本各地の池で繁殖していることが確認されています。ミドリガメが日本在来種であるニホンイシガメやクサガメのニッチを占領して、急速に日本の在来種が減少しています。伊豆半島伊東市近郊ではハリネズミがゴルフ場等で繁殖し、その棲息範囲を広げています。こうした問題を皆で一緒に考えましょう。

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11月21日(土)動物臨床医学会 発表論文:野生動物保全と市民の対応

  • 2009年09月30日(水)13時12分
  • by 中津動物病院 院長

野鳥の保全と傷病野鳥に対する市民の反応
大阪府における野生鳥獣救護の現状
               NPO法人“野鳥の病院”代表理事 
           中津動物病院院長 獣医師、獣医学博士 中津 賞 

 大阪府では毎年500〜700羽が府民によって動物病院に持ち込まれている。大都会における救護例の特徴は誤認救護が1/3を占めていることである。この時期の保護は誘拐とも言い表されている。誤認救護とは巣立ち直後でまだ充分に飛行能力がないヒナを見て、市民が病気だ、弱っていると感じて保護してしまう。
スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ等のヒナは巣内に留まり、2週間に渡って親鳥の養育を受ける。この期間は巣から落下すると親はもはや餌を運ばない。従って巣から落下しないように必死に巣材をつかんでいる。成長がすすんで、巣から飛び立つには、つかんでいた巣材を離す必要がある。心理的な一大飛躍が求められる。従って巣立ち直後のヒナは飛べなくて当然である。最初の飛行は2mに満たないかもしれない。しかし5分でも10分でも休憩後は3m飛べる。飛行に必要な胸の筋肉と心肺能力が飛行毎に急激に発達し、翌朝にはかなりの飛行能力を発揮することが出来る。人口の多い都会ではこの最初の飛行が市民の目にとまり、弱々しく見える所からついつい保護してしまう。
 この時期は親鳥の後をついて行動をともにすることで、自然界で生きていく知識、行動を身につけている極めて大切な時間を過ごしていると言える。そして将来独り立ちしたときの生存をかけた学習をしている最中であり、社会化期と呼ばれている。この重要な時期に、親鳥から切り離して保護することは将来の食物連鎖の厳しい自然界で生きぬく能力を身につけることなく育つことを意味している。言い換えれば保護が終わった時点で、自然へと放鳥したときにたちまち生活に行き詰まり、自分が餌になるか、餓死を待つだけとなる。また同時に、救護に伴う2〜3週間に渡るボランティアの苦労は水泡に帰することになる。5月下旬頃から最初のヒナが巣立つ時季に合わせて全国の愛鳥グループが“ヒナを拾わないで”キャンペーンを実施して、ヒナ鳥の自然な発育を見守るように市民に訴えている。この効果は次第に表れて、最近では救護個体数の減少に現れている。
 この他に食物連鎖による事態は静観して欲しい。例えば、カラスがカルガモのヒナが親鳥の後を付いて、行列して歩いているのを空中から盛んに狙って低空飛行を繰り返している。こうした事態はカラスが自分の巣の中のヒナに餌を持ち帰る為の必死の採餌行動である。カルガモのヒナが可愛いからといって、カラスをヒトが追い払うことはしないで欲しい。カルガモのヒナはカラスの攻撃を必死にかわして、生き延びる術を身につける。こうして厳しい自然の淘汰(選択)を受けて、強いものだけが生き残り子孫を設けることが出来るのである。
 それではいかなる事態が発生した時に、ヒトは救護の手を差し伸べる必要があるのかを考えてみよう。それはヒトが存在する為に自然界に影響が及んでいる時と言える。例えば、
 1高圧送電線に鳥が誤って触れて地上に落下した場合。
 2 車や風車との衝突。
3タンカー事故による油汚染鳥の発生。
4農作物を鳥害から守る防鳥網に絡まっている鳥。
5荷造り紐や釣り糸に絡まっていたり,釣り針を飲み込んでいる鳥。
6誤って営巣木を切ってしまった場合等である。
更に、発見した鳥が明らかに外傷を負っている場合や出血していたり、片方の翼を落としている場合。脚が全く使えていない場合。近づいたヒトから逃げることが全く出来ないほど弱っている場合。呼吸はしているが、意識が無く横たわっている場合には原因の如何にかかわらず救護すべきであろう。
救護例を鳥の種類から見ると大阪ではスズメ、ドバト、ツバメ、キジバト、ヒヨドリ、ムクドリが3/4を占めて多く。最近ではハシブトカラス、ハシボソガラスの救護例が増えている。またカワセミ類あるいはバン、サギ類の自動車との衝突事例も増えている。頭部の打撲による一時的な意識の混濁、翼や脚の骨折、嘴の損傷等が多い。待ち込まれてからの経過を調査してみると、救護原因にかかわらず、脱水の改善、強制給餌、酸素吸入、保温等の濃厚な処置をしても救護から1日から4日以内に死亡するものが、全死亡例の1/3を占める。従ってこの4日間に集中的に治療する必要がある。理由の如何にかかわらず鳥は餌が取れず、水も飲めない状況で経過すると数時間で脱水が始まり、やがて体重の減少が10%を超えると殆ど動けなくなり、見つけた人に救護されることとなる。この10%程度の脱水は重症に分類される程で、深刻な事態である。外観上眼球が眼窩に落ち込んで小さな目つきになり、動作が緩慢で、羽ばたきも充分に出来ない。あるいは体温が低下しているかもしれない。従ってこうした状況で保護した鳥は一刻も早く獣医師による輸液や給餌を含めた広範で的確な治療を受ける必要がある。自宅に留め置いて、ご飯粒や牛乳に浸した食パンを与えたり、嘴をこじあけてスポイトで水を与えようとする行為はかえって事態をこじらせることになる。鳥は種類によって食性が異なり、食べ物(餌)が違う。そして食性に合った餌がもっとも良く消化出来る消化管を持っている。従って、魚を食べるミサゴやコサギ、カワセミ等の鳥に前記のご飯粒や牛乳に浸した食パンを与えても栄養的な役には立ちにくい。オオルリやムクドリの様な昆虫食性の鳥に、飼い鳥のブンチョウやセキセイインコに与える雑穀類を給餌してもうまく消化出来ず、成長が遅れ、体重が増えず、脚が弱くて体を支えられない事態に陥る。このように今保護した鳥は一体何という鳥なのかを知ることがとても大切である。こうした名前を確かめる行為を同定という。名前が判明したなら食べている餌が判る。日本野鳥の会から発刊されている“日本の野鳥”は同定の決め手になる鳥の羽毛の色彩等の特徴が図解され、また簡単な記述ではあるが食性の表記もされていてとても役に立つ。自然界では鳥は実に多様な餌を食べている。従って保護した後も餌の多様性に気を配る必要がある。しかし一般市民が手に入れられる餌は限られている。例えば昆虫食性の鳥の餌として使える市販されているものには、せいぜいミルワームや熱帯魚用の餌であるコオロギ等の2種類くらいである。餌の多様性という観点から,これらの昆虫が好む餌,例えばミルワームにはバナナ、濡らしたキャットフード、ふかしたイモ等のでんぷん質を与えて太らした虫を鳥に与えることである。コオロギ用の餌も市販されている。ミルワームは冷蔵庫に保存され売られているが,室温に置いて,上記餌を与えると盛んな食欲を示してすぐに倍くらいの大きさまで成長する。
 最近では鳥の食性にあった、栄養要求を満たす総合栄養食とも表現出来る様な栄養不足に陥る心配のない多種類の餌が獣医師向けに市販されている。その為に自宅に保護した野鳥を留め置くことなく、早期に獣医師に相談することを勧めている。ただし、野鳥を捕獲したり、保護して手元に留め置くには法律上許可がいる行為で、一般にはできない。そのため、保護する前に各自治体の野生動物保護担当部署に連絡して指示を仰ぐ必要がある。また搬送する動物病院を紹介してもらわなければならない。最近では野鳥の違法飼育の警察による摘発が活発に行われているので特に注意する必要がある。哺乳類ではタヌキの保護例が最近は増えている。救護原因の主なものは交通事故である。重度のものから軽度のものまで様々で、外傷の痛みと恐怖から救護者を咬む可能性もあるので特に注意を促したい。また外部寄生虫としてダニやノミが居るかもしれない。野生動物は入院中に感染症の検査が随時行われ、人との共通感染症の有無が検査され、必要な治療も施される。
 動物病院で治療が終わった野生動物は出来るだけ短い治療期間を経て野外へ放鳥/放獣される。しかし野生復帰するのに、今しばらく経過観察が必要な場合に、例えば体重をもう少し増やしたい、餌の摂取量が少なく、もう少し体重の増加が望ましい場合で,その対策として一日数回の追加栄養補給が必要といった症例では、行政の野生動物保護担当部署から特別の許可を得て、一時的に救護技術を有するボランティアに預託して回復を待つことになる。こうした救護技術を持つボランティアを養成する講座を開催すべくNPO法人野鳥の病院を設立した。是非あなたの力を貸してください。傷病鳥獣保護飼養ボランティア養成講座は今年度については年6回近畿地方で開かれる予定である。この講習会は助成金を得て無料で運営する予定で、皆様のご参加をお待ちしている。野鳥救護に関する基礎的な知識と技術を習得する為の講習会である。今年度第1回の講習会は大阪で7月に開かれ、40名近い参加者が熱心に受講された。講習会修了者はボランティアとして登録され、行政の要請で野鳥を飼養することになる。大阪府では50名近くの方々が登録され活躍されている。講習会の内容は座学として“野生動物と法律について”が行政担当者から解説され、ボランティアとしてすでに活躍されている方から“体験談”が話される。獣医師から野生動物の救護に必要な知識が講義される。午後からは鳥の保定法、食性に合致した病院食の選び方、食欲のない鳥への強制給餌法、食欲があるヒナへの餌の与え方等を実体験していただく。
 野生動物に対する知識が増えてくれば、町で見かけた傷ついた野生動物にどう対応すれば良いかを判断出来るようになるので、是非機会を見つけて受講していただきたい。また一歩すすんで、タンカー事故に伴う油汚染海鳥救護の講習会も毎年開催されているので、関心があれば受講されることを期待したい。

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